追放された薬師は、辺境の地で騎士団長に愛でられる
王都と聞いて、胸がズキっとする。だが、私が王都出身だということは、黙っておこうと思う。私が国王を殺害しようとしたなんてデマが、どこからか広がってしまうかもしれないから。
代わりに私は、ソフィアさんに聞いていた。
「謎の病気って、何ですか?」
もしかして、ジョーがかかっていたものですか?と言いかけて口を噤んだ。
ジョーがもし本当に騎士団の人だったら、私なんかと関わっていると知られたくないに違いない。国王殺しの罪をかけられた、悪人なんかと。
ソフィアさんは困った顔で教えてくれる。
「高熱が出て、倒れてしまうの。それで死んでしまう人もいるし、回復しても手や足が動かなくなってしまうの」
そうなのか……その情報だけだと、ジョーがかかった病気と同じものなのかは分からない。だが、感染性のものだろう。
せっかくこの街でお世話になり、仕事までもらえたのだから、出来る限りやらなければならない。そう、ジョーに恩返しをするためにも。
「私に治療が務まるか分かりませんが、頑張ります!」
意気込む私を見て、ソフィアさんは嬉しそうに笑った。
「ありがとう、アンちゃん。
でも、アンちゃんも病気にかからないように注意してね」
その言葉が嬉しかった。
新しい生活に、新しい仕事に、新しい先輩。どれも全てもったいないくらいいいものだ。全てに感謝して、全てに少しでも恩返しをしたい。私の薬師の腕なんて、王宮の師匠に比べれば微々たるものなのだが。