追放された薬師は、辺境の地で騎士団長に愛でられる
部屋を片付けて、治療に使用したものを入念に消毒した。そして、診察台やドアノブまでも、徹底的に清潔にする。こうやって感染症対策をした後、私はようやくソフィアさんと二階の食堂の椅子に座った。
「せっかくアンちゃんが来てくれたから、今日はご馳走するね」
そう言って、ソフィアさんは料理の腕をふるってくれた。シチューにサラダに手作りのパン。どれもこれも美味しかった。そして、王宮暮らしで料理なんてしなかった私は、料理の腕を磨かないといけないと思い始めた。王宮では宿舎にいたため、炊事係が自動的に食事を作ってくれた。だけど、ここではそうはいかないのだ。
恥を忍んでソフィアさんに料理を教えてくださいと頼むと、彼女は頷きながらも不思議な顔をした。
「アンちゃん……料理ができないって……今までどこにいたの?
まさか貴族様ってことはないよね?」
私の両親が貴族だったかは知らないが、一度もそんな話は聞いたことがない。だから少なくとも、貴族ではないだろう。ジョーは騎士団長だし、間違いなく貴族だ。釣り合わないのは言うまでもない。
ソフィアさんは続ける。
「それに、アンちゃんの薬師としての知識は、とても凡人だとは思えないわ」