追放された薬師は、辺境の地で騎士団長に愛でられる

「でも……」

 ソフィアさんはその長い手を合わせて、じっと私を見た。

「私はあんなジョセフ様、見たことがないわ」

「……え?」

「今日のジョセフ様、とてもおかしかったわ。
 女性に興味がない冷たいジョセフ様が、アンちゃんを前に全力で好き好きアピールしているなんて……」

「いや……何かの間違いでしょう。私はただの恩人だから……」

 そう言いながらも、ジョーを思い出して胸が熱くなる。あの甘い言葉も、熱い瞳も、私に向けられるだけなのだと思って。

 ジョーを思って真っ赤な顔の私を見て、ソフィアさんはふふっと笑う。

「だって、ジョセフ様が王都に行かれる前にここに来たとき、すごく怖かったから。
 彼は淡々と熱があることを告げ、私が治せないこたを告げると黙って出て行ったわ。
 彼はにこりともしなかったし、私も怖かったのよ。下手なことを言ってジョセフ様を怒らせてしまい、殺されたらどうしようなんて思ったりして」
 
「そうなんですね……」

 普段のジョーは、私が知っているジョーとは、予想以上に違うらしい。その言葉に戸惑いを隠せない。

「アンちゃん」

 ソフィアさんが私を呼ぶ。

「ジョセフ様はかっこいいし強い。だからもちろん女性からは憧れの的だわ。
 でも、ジョセフ様にとって、アンちゃんはやっぱり特別な人だと思うの。それが恩人だという理由だとしても」

 特別な人……恋愛は関係なく、恩があるから……そんな理由だったとしても、嬉しいかもしれない。嬉しいけど、結ばれることはないのだろう。
 はじめから分かっていた。最強の騎士様がただの薬師の私を慕うだなんて、出来すぎた話だ。
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