追放された薬師は、辺境の地で騎士団長に愛でられる
「じ、ジョー、待ってて!
皿洗いをすぐに終わらせて帰るから!」
階段を駆け上がる私のあとを、ソフィアさんが追う。
「アンちゃん!もういいから帰って!!」
ソフィアさんの悲鳴のような声が聞こえる。そして……
「皿洗いなら、俺がする」
流し台に立つ私の手から、ジョーがひょいっと皿を取り上げてしまう。そしてそのまま、じゃぶじゃぶと洗い始めた。
ちょ、ちょっと待って。これはさすがにいけないよね。貴族の上に騎士団長であるジョーに、皿洗いをさせるだなんて。おまけに、その立派な隊服が濡れてしまう。
「ジョセフ様!!やめてください!!」
混乱して思わずそう言ってしまった私を見て、
「そんなこと言うな!」
嫌そうに言うジョー。そのままの勢いで、ジョーはまた信じられない言葉を吐いたのだ。
「キスするぞ!!」
その瞬間、かあーっと顔に血が上った。私だけではない、言った張本人のジョーだって真っ赤な顔をしている。ジョーってこんな顔するんだ。そしてそのまま、しまったとでも言うように口を押さえる。
意外なジョーの顔に、胸のきゅんきゅんが止まらない。どうしよう……私、おかしい。私もおかしいけど、ジョーだっておかしい。