追放された薬師は、辺境の地で騎士団長に愛でられる

「私、からかわれているのだと思います」

 ため息混じりにそう告げると、

「確かにジョセフ様は信じられないことをたくさんされるけど、至って本気だと思うよ?」

 ソフィアさんは、またそんな私に気を持たせるようなことを言う。

「そうそう。アンちゃん、もしかして今まで彼氏とかいたこともないの?男心分からないの?」

「はい……」

 私が頷いた時……

「アン!」

 ちょうどタイミングよく、ジョーが現れたのだ。その声を聞いた瞬間、びくっと飛び上がってしまった。今日はどんなサプライズが待っているのだろうか。

 ジョーの声を聞くなり、

「じゃあ、私はそろそろおいとましますね」

ケーキ屋の奥さんは帰ってしまうし、

「アンちゃん。私、消毒薬作ってくるね!」

ソフィアさんは奥へと引っ込もうとする。
 そういう気遣いはいらないし……ジョーと二人きりになると、またときめいてしまう。私は確実に、ジョーへと引き込まれているのだ。
 だけどジョーは、

「ソフィアさん」

意外にも、消えてしまいそうなソフィアさんに声をかけたのだ。その、手に持っている小包をぐっと前に出しながら。

「アンとケーキを食べようと買ってきた。もちろん、あなたの分も。
 もしよければ、少し休憩とかどうか?」
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