追放された薬師は、辺境の地で騎士団長に愛でられる

「じょ、ジョセフ様……どうもありがとうございます……」

 ソフィアさんはびっくりして苦笑いなんてしている。それに、ケーキってまさか……

「どうやら、俺はアンと結婚する運命のようだ」

 そう言ってジョーが包みを開けると、さきほどケーキ屋の奥さんからいただいたものと全く同じケーキが、三つ入っている。……三つなのだ。ジョーも居座る気満々なのだ。

「あの……それならちょうど同じものがあって……」

 いただいたケーキを指差すと、ジョーは嬉しそうに目を輝かせた。

「そうなのか。君ももうすでに買っていたのか……」

 甘い声で嬉しそうに言われ、そっと手に触れられる。そしてお決まりのように、手にチュッと口付けされる。いちいちドキドキしてしまう私は、いつまで経ってもジョーの甘さに慣れない。
 実際、ジョーと私が結婚なんて出来るはずもないのに。

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