追放された薬師は、辺境の地で騎士団長に愛でられる
皿とフォークを持って一階に降りると、ジョーとソフィアさんが楽しそうに話をしていた。ジョーもソフィアさんも互いに気がないことは分かっているが、ジョーが女性と話していることにずきんと胸が痛んだ。
私はジョーと結ばれる運命ではないのに、こうもジョーに狂って嫉妬して、惨めな女だ。
「アン」
甘く優しい声で、私を呼ぶジョー。私はジョーのほうを見ないようにと頑張る。
「俺は嬉しい。こうも街中から祝福されるなんて」
「いや、勘違いでしょう」
私は努めて冷静に抵抗する。この、甘いジョーに流されてしまわないように、必死でもがきながら。それなのに、きっと私は真っ赤で、こんなにも胸をドキドキ言わせている。
「ねぇ、ジョー!このケーキ、すっごく甘くて美味しいよ!」
なんとか空気を変えようと必死にそう言うが……ジョーは、私のフォークに乗っているケーキを、美味しそうにぱくっと食べる。
自分のものを食べればいいのに、わざとそうやって私のものを食べるのだから。なんとあざとい男だろう!
そしてジョーは、目を細めて嬉しそうに言う。
「本当だ。すごく甘い」
そしてそのまま、ジョーのケーキの生クリームを指で掬い、私の唇の前に差し出す。何を言ってるの?これを舐めろって言うの!?
無言で抵抗を続ける私だが、ジョーは酷く甘ったるい声で言う。
「アン、舐めて?」