追放された薬師は、辺境の地で騎士団長に愛でられる
「俺とアンの仲を引き裂く奴は……殺す」
「じょ、冗談でも殺すとか言わないでよ!!」
私は思わず叫んでいた。ジョーはこうやって力任せに人を痛めつけるから、怖がられるのだ。
ジョーは罰が悪そうな犬みたいに、私を見てしゅんとする。そういう態度だって罪なのだ。特別扱いは嬉しいが、結ばれない特別扱いほど酷なことはない。
「私!紹介受けます!!」
「おい、アン!!」
ジョーは顔を真っ赤にして、まるで引き裂かれる恋人みたいに叫ぶ。でも、私は負けない。
「だって、貴族と平民は結ばれないでしょう?……ジョセフ様」
平静を装うが、私の声は震えていた。
ジョーは悲しそうな瞳で私を見て、消えそうな声で告げた。
「………分かった」
その返事が、酷く私の心を痛めつけるのだ。私は、大好きな人にこんな顔をさせて、何をやっているのだろう。
「……確かに俺は貴族だ。平民と貴族の結婚は、法律で禁止されている。でも、何か方法があるはずだ。
万が一どうしようも出来なかったら、俺はアンとともにこの街を去ってもいいとまで思っている」
その言葉が苦しい。ジョーはそこまで私のことを考えてくれていたのだと。それなのに私は、遊ばれているとか、本気でないとか言って、最低だ。
「でも……ジョーがこの街を去ると、この街はまた治安が悪くて怖い街になってしまう」
そう。だから安易に駆け落ちだなんてしてはいけないと思うのだ。
私はこうやって、毎日ジョーに会えるだけで幸せだ。……いや、幸せなの?……分かっている、本当はジョーと結ばれたいと思っていることなんて。