追放された薬師は、辺境の地で騎士団長に愛でられる
黒い騎士に探されています
次の日……
私に興味があるという男性と会うため、私は待ち合わせ場所に向かっていた。そもそも、私に興味があるということ自体不思議だ。私はこの街の薬師として成功し始めたから、金目的だろうか。それとも、ジョーに付きまとわれているからだろうか。
いずれにせよ、王都にいる時は恋愛になんて無関係であったし、モテるタイプではないと自覚している。
そんな私に、ジョー以外に興味を示す人がいるなんて。いや、ジョーですら、私が恩人だから大切にしているだけかもしれない。
それに、昨日のジョーの言葉を思い出して胸が痛んだ。ジョーは自分の身分を投げ打ってまで、私と一緒にいたいと言ってくれた。それがどこまで本心なのかは分からないが、あの時のジョーの泣きそうな顔……そう、王都の騎士団長よりも強いと言われているようなジョーの泣きそうな顔を思い出すと、胸がぎゅーっと絞られたように痛むのだ。
だけど、世間では貴族と平民の恋は御法度とされている。それでも仮に結婚したとしても、生活レベルに差がありすぎて駄目になってしまうかもしれないだろう。
現時点では、ジョーは私に合わせて皿洗いや薬草園の水撒きなんかをしてくれるが、元々はそんなこととは無縁の人種なのだ。
いっそのこと、ジョーに嫌われてしまえばいい。……いや、嫌われるなんて、絶対に無理だ。
そんなことを延々と考えながら待ち合わせ場所に近付く。お花畑の前のベンチだ。ジョーと訪れることが出来たら、どんなに素敵な場所だろう。
だけどその場所には、見慣れない黒い鎧に身を包んだ騎士が二人立っていたのだ。