追放された薬師は、辺境の地で騎士団長に愛でられる
ここまで追っ手が来ているのに、ジョーはどうしてこんなに私のことばかり考えてくれているのだろうか。こんなジョーの善意を、裏切るわけにはいかない。
「俺のは今日、アンの紹介された男との待ち合わせ場所に行っていた。
アンに気がある奴がどんな奴なのか気になったし、ひと泡吹かせてやろうと思って」
そ……そうなんだ。あそこにジョーがいたのは、偶然ではなかったのだ。
「知ってる」
思わず答えると、
「それじゃあ、俺とあの男たちの話も聞いていたのか」
ジョーは呟く。そして私は頷いていた。
「もちろん俺はアンを渡したくなかったから知らないふりをしたが、あの男たちも怪しさが半端なかった。
とある男の私兵と言うが、その男の名前は絶対に言わない。兜で顔も隠している。鎧には、紋章も何もない」
「確かに……」
「俺はアンが狙われているのではないかと思っている」
ジョーの真剣な顔を見ると、今さらながらに怖くなってくる。冤罪で王宮を追放されて、この辺境の地まで追い詰めてくるなんて……
「俺は、アンの助けになりたい。
命の恩人だからではなく、一人の騎士として。……一人の男として」
いつもは騎士団長だとか強いだとか言うと、言って欲しく無さそうにする。だけどこんな時だけ、騎士を全面に押してくる。調子がいいのだから。
「アンちゃん。……私も、出来ることがあったらするわ」
ソフィアさんも心配そうに言ってくれる。ジョーだけでなく、ソフィアさんにも迷惑をかけていることに気付く。
でも、こうしてみんな力になってくれると言ってくれる。私の味方をしてくれる。私はこんなにも優しい人たちに囲まれて、本当に幸せだ。
私は二人を見て、深呼吸した。そして、今までの出来事を話し始めた。二人とも神妙な面持ちで、私の話を聞いてくれた。