追放された薬師は、辺境の地で騎士団長に愛でられる
彼が守ってくれるようです
休憩時間になり人がいなくなった治療院の二階で、私はジョーとソフィアさんに話をした。
静かな治療院に、私の声が響いていた。
「私は小さい頃に両親を亡くし、顔も覚えていない兄とも引き裂かれ、王宮で薬師として働き始めました。
王宮の暮らしは不自由なく、素晴らしい師匠や優しい仲間にも恵まれ、充実した日々を送っていました」
「えっ!?それじゃあ、アンちゃんは本当に王宮薬師なの!?」
ソフィアさんが赤面した顔で、目を輝かせて聞く。私は頷いて、謙遜した言葉を付け加えた。
「下っ端の王宮薬師でした……」
ジョーをちらりと見る。ジョーは何も言わず、ただ椅子に腰掛け、私の話を真剣に聞いている。
「ある日私は、身に覚えのない罪をかけられました。国王に毒を盛ったという……」
この事実を告げるのが怖かった。ジョーにも、ソフィアさんにも嫌われると思った。だが、二人ともむしろ私に同情するような表情をしており、それを見てホッとする。
「私は王宮を追われ、助けてくれる親族もおらず放浪しているところ、倒れているジョーを見つけました。
それ以降は、ご存知の通りです」
ジョーが何も言わないことに不安を覚える。悲しそうな顔こそしているが、心の中でどう思っているのかすごく気になる。
まさか幻滅されたりは……していないよね?
「ジョー?」
思わず声をかけると、彼はさらに泣きそうな顔をしたのだ。最強だと言われるジョーの、こんなに辛い顔を見たことがある人はいるのだろうか。