追放された薬師は、辺境の地で騎士団長に愛でられる
「アン……」
ジョーは立ち上がり、私の前へと歩み寄る。そして、私の手をそっと握る。そのまま、片膝を付いて跪いた。
「アン……俺、ジョセフ•グランヴォルは、
貴女の盾となり、剣となり、
病める時も、健やかなる時も、……ずっと永遠に、貴女のすぐ近くで、貴女を守ることを誓う」
握られた手にそっと口付けされる。胸がぞわっとする。
忠誠を誓うとか、求めていなかった。ジョーの負担になることは、分かりきっているから。だけど、実際にこんなことを言われると、嬉しくて涙が出てしまいそうだ。
私はこのままオストワル辺境伯領に、ジョーと一緒にいていいのだと思って。
思わずふふふっと笑ってしまうと、ジョーは不服そうに私を見上げる。そして、幸せそうに私の手を頬に付ける。もうそろそろ、ジョーの気持ちを信じてもいいのかな。私は国一番の騎士に守られて、国一番の幸せ者だ。