追放された薬師は、辺境の地で騎士団長に愛でられる
ふと横を見ると、ソフィアさんが真っ赤な顔をしてどこかに行こうかそわそわしていた。こうやって、いつもジョーの世界に巻き込まれ、ソフィアさんに恥ずかしい思いをさせてしまっている。いや、私だって正気に戻ると、顔から火が出るほど恥ずかしい。
思わずジョーの手を振り払い、立ち上がった。真っ赤な顔をしながら。
こんな私を
「アン」
ジョーは甘く切なく呼ぶ。平静を装って彼を見るが、彼に絆された私は酷く真っ赤でヘナヘナした顔をしているのだろう。
だけどジョーは至って普通だ。この人はどうしていつもこうも普通なのだろう。
「俺は今からオストワル辺境伯のもとへ報告に行く。
……大丈夫だ。領地を挙げて、アンを守ってもらおうと思っている。セドリックもいるし、分かってくださるだろう」
「……え?」
「辺境伯も、アンを手放したくないだろう。
アンのおかげで、この地の疫病が治ったから」
ジョーは私の髪をそっと撫で、マントを翻して治療院から出て行った。私はジョーがずっと出て行った扉を見ていた。頬を真っ赤に染めて、胸をドキドキ言わせて。
私はいつの間にかジョーにどっぷり浸かってしまって、もう離れられないようだ。