追放された薬師は、辺境の地で騎士団長に愛でられる



◆◆◆◆◆


 ここはオストワル辺境伯領、第一騎士団宿舎。


 騎士団長ジョセフは、騎士団の者と友人のセドリックを集め、アンの話をしていた。
 始終真面目な顔のジョセフを、セドリックは笑いを浮かべて見ている。そして、とうとう我慢が出来なくなって告げた。

「ジョー。君がアンにどっぷり浸かっているのは知ってるよー。
 町中で噂になってるもん!」

 その言葉を、騎士たちは半笑いで聴いている。
 騎士たちも、最近のジョセフのアン狂いには大変驚いている。剣だけが友人だった孤高の騎士が、こんなにも一人の女性にのめり込んでいるなんて、信じ難いものがあった。 
 最近のジョセフといったら、見回りだと告げて、度々治療院に行っている。朝から水撒きをしたり、掃除をしたり。メイドかと思うほどの奉仕ぶりだ。

 半笑いの騎士たちに、ジョセフは大真面目な顔で告げた。

「アンが国王殺害の罪を被っている。
 これは、どういうことか、誰がアンを悪人に仕立てたのか、俺は知りたい」

「団長……それを知って、まさかその犯人を殺す訳じゃないですよね?」

 少しびくつきながら告げた騎士に、ジョセフは相変わらず真顔で言う。

「ぶっ殺す」

 冗談じゃない……これは本気で言っていると、誰もが思った。

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