追放された薬師は、辺境の地で騎士団長に愛でられる
「団長は、御歳二十七歳にもなるのに、貴女以外の女性に興味を持たれたことはなかった」
「そうなんですか!?」
思わず聞き返してしまう。
ジョーほどの美男で強い男なら、世の中の女性が放っておかないわけがないのに。
「本当に興味がなかったのだろう。女性が話しかけても団長は無視するから、誰も寄り付かなかった。
だから、団長があんなに満面の笑みでアンに犬みたいについて回っているのを見て、皆見てはいけないものを見てしまった気分だ」
「そ……そうですか……」
何も答えられない私は、かろうじてそう答えただけだった。
「でも正直、騎士団の間でも貴女の評判は高い。
我らの団長を救ってくれたり、疫病を止めてくれただけではない。こうやって私たちを気遣って食べ物を分け与え……この食べ物を食べた者は皆、体の調子が良く徹夜の任務でも成し遂げれるほどだ」
「ありがとうございます」
もったいないお言葉だ。私はただでさえ多忙な騎士団の皆さんに、さらに業務を増やさせてしまっている。私みたいな平民の護衛なんていう、馬鹿げた業務を。だからせめてもの償いに、こうして力になれることをしているのだ。
「アン。今度休みの時に、騎士団にも来てみるか?」
「……えっ?」
「団長が真面目に業務をしている姿を見ると、団長のことを惚れ直すのではないか?
アンの前にいる団長は、ただの恋に酔った馬鹿男に他ならないから」