追放された薬師は、辺境の地で騎士団長に愛でられる


 ジョーが来たため、騎士が慌てて持ち場に戻る。そんな騎士を横目に見ながら、ジョーは私に続いて治療院の中へと入る。

 あの黒い騎士騒ぎがあってから、ジョーが私のもとを訪れる頻度が増えた。心配してくれるのはいいが、仕事はしているのかと不安になる。私を守るために仕事を投げ出すのだけはやめて欲しいと、心から思う。ジョーには今まで通り、皆の尊敬する騎士団長でいて欲しいから。

 だから、

「私は元気だよ?」

努めて元気に告げるが、ジョーに会って元気をもらっているのかもしれない。
 ジョーが近くにいるだけで安心する。私はここにいてもいいのだと思って。

「アン、そろそろ仕事も終わりの時間だ。
 さっさと閉店して帰るぞ」

「そうだね」

 今日はソフィアさんは体調を崩し、休みを取っている。だから治療院にいるのは私だけだ。そして黒い騎士の騒ぎがあってから、ジョーはいつも私を家まで送り届けてくれる。今日だってそのつもりらしい。

「ジョー。家は近いんだし、一人で帰れるよ?」

「駄目だ。アンに何かあっては困るから」

 抵抗するものの、ジョーが折れないことは知っているため、いつものようにジョーと帰ることになる。さっと洗い物を済ませ、治療院を閉め、外に出た。

 
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