追放された薬師は、辺境の地で騎士団長に愛でられる
「ジョー!こんな時間にどうしたの?仕事は?」
いや、仕事があっても、ジョーはいつも私のところに来るのだが。
だが、目の前のジョーは、いつもの隊服姿ではなかった。いかにも高価なスーツに身を包み、頬を緩ませて私を見ている。スーツ姿のジョーも、紳士でとてもかっこいい。目の保養になるし……ドキドキする。こうやって甘い瞳で見られるだけで、私は体の力が抜けてしまうのだ。
「今日は休みを取っている。
せっかくのアンの休日だ、一緒に過ごしたかった」
「ジョー……でも……」
慌てる私は、真っ赤な顔で告げる。
「私っ!こんな普通の服しかないし、ジョーと並んで歩くのが恥ずかしい!」
この家に置いてあった服は、おそらくセドリック様が私用に準備をしてくださったものだろう。その服にケチをつけるつもりは全くないが……でも、かっこいいジョーを見ると、卑屈になってしまう。
「そんなこと気にしなくていい。必要なら、俺が服でも何でも買う」
「そんな……ジョーにそんなことさせたら、私がジョーをいいように使ってるって言われるし……」
「アンを侮辱する奴は、俺が許さない」
ジョーはそんなことを言うから、ジョーには何も相談出来ないな、と思う。ジョーは例外無しで、私を苦しめる人を排除してしまいそうだから。
ジョーは優しい目で私を見て、そっと頬を寄せた。ジョーの頬と私の頬が触れ、ぼっと熱を持つ。そしてそのままぎゅっと抱きしめられた。