追放された薬師は、辺境の地で騎士団長に愛でられる
それから、ジョーとオストワルの街を歩いた。
通り過ぎる人が振り返り二度見をするが、それにはもう慣れてきた。また騎士団長がアンにべたべたしていると思われているのだろう。恥ずかしいが、諦めの境地に達している。
そして、ジョーは尻尾を振る犬のように私に擦り寄り、嬉しそうに見下ろすのだ。美男の笑顔の破壊力は凄まじく、どきどきして顔が真っ赤になってしまう。だから、ジョーから目を逸らしている。
ジョーは、服の店やらアクセサリーの店やら、たくさん私を連れて回った。そして、可愛いとかいいねとか反応したものを、全て買ってしまうのだ。一体いくらかかっているのだろう。だから、必要以上に反応しない作戦を取ることにした。
「結婚したら、毎日がこんな生活なのか」
ジョーがしみじみと言うが、
「だから……結婚出来ません」
私は苦し紛れに答える。
ジョーが私に好意を抱いてくれているのはよく分かるが、身分というどうしようも出来ない障害だってあるのだ。
私がジョーと結婚するためには、本当に駆け落ちしなければならないだろう。そして、ジョーがこの地を去るということは、この地の混乱を意味する。私情で多くの人々を苦しめるのは、さすがにいけないと思った。
それなのに、
「どうしてだ?」
ジョーはなおも不服そうに言う。
「俺と結婚したら、絶対に大切にする。一生尽くす」
そんなこと言わないでよ、ますます離れられなくなってしまうから。