追放された薬師は、辺境の地で騎士団長に愛でられる

◆◆◆◆◆




 次の日から、ヘンリーお兄様の治療は始まった。
 ヘンリーお兄様は予想以上に頑固で怖がりで、なかなか治療するのが大変だった。




「お兄様、まずこのスープを飲んでください。
 これからの治療に耐えられる体力気力を補います」

 そう告げた時から、お兄様は不安な顔をしていた。

「ち、治療って、そんなに大変なものなの?」

「はい、それなりに……
 動かなくなった足の神経を再生させて、繋げないといけないですから」

 私の言葉に青ざめた。
 そして促されるままにスープをひとくち飲むと、

「まずっ!」

のひとこと。
 いつもいいものばかり食べているお兄様にとって、このスープは泥水みたいなものかもしれないが……でも、そこは我慢しなければならない。

「もう飲みたくない!」

なんて音を上げるお兄様を、必死で説得した。

 ソフィアさんも隣で不安そうに見ていたが、予想以上に怖がりで頑固なお兄様を、私と一緒に説得し始める。


「ヘンリー様。アンちゃんは、この街の疫病を鎮めたかたです。
 どうかアンちゃんの指示に従ってください」

「分かってるけど……容赦してよ、アン?」

 上目遣いですがるように告げるお兄様に、私は鬼にならないといけない。

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