追放された薬師は、辺境の地で騎士団長に愛でられる
「駄目です、お兄様。
中途半端な治療をして、結局治らなかったらいけないじゃないの……
それに、ジョーだってちゃんと飲みました!」
「えっ、本当に!?」
お兄様は縋るような顔で私を見る。
「ジョセフ様みたいな強いかたは飲めるのかもしれないが、僕は……」
「つべこべ言わないで、さっさと飲んでください!!」
こんなお兄様を見ると、文句一つ言わないで治療させてくれたジョーは神なのではないかと思ってしまう。そして、患者に嫌な思いをさせるこのスープの味を改良しないといけないと切に思った。
なんとかスープを飲み終えると、
「次は、鍼治療で神経を刺激します」
鍼に薬を塗る私に、
「針!?」
お兄様は大声で聞く。その顔は、恐怖で青ざめているほどだ。
こんなお兄様を見ていると、我ながら妹として情けなくも思う。お兄様ほどの怖がり患者は、なかなかいない。
「大丈夫です。治療鍼なので、痛みはそんなにありません」
「でっ、でも!そんなに長いでしょう!!」
お兄様は取り乱して叫び始める。
「王宮では標準治療です。怖いようであれば、麻酔薬も使いましょう」
「まっ、麻酔して!ガンガンに麻酔かけて!!」