追放された薬師は、辺境の地で騎士団長に愛でられる
昼過ぎに、ジョーはやってきた。
いつもよりも顔を出す頻度が少なかったのは、きっとお兄様がいるからだろう。お兄様と私の家族の時間を邪魔してはいけないと、ジョーなりに気を遣ってくれていたのかもしれない。
だが、ジョー中毒になり始めた私は、半日ジョーに会えなかっただけて不安でいっぱいになるのだった。
「アン」
いつものように扉を開けるジョーを見て、その胸に飛びつきたい気持ちでいっぱいになる。お兄様といても、私はこうもジョーのことばかり考えている。
お兄様の薬を混ぜている私に、ジョーはそっと近付く。そして、
「噂で聞いた。ヘンリー様が治療を拒否されていると」
耳元で告げた。息が耳にかかり、思わずビクッとしてしまう私は、
「そそそそうね!でっ、でも!お兄様も何とか頑張ってくださってるよ!」
ジョーからばばっと体を離して慌てて答えた。
駄目だ、お兄様に触れても何も思わないのに、相手がジョーだったらすぐにふにゃふにゃになってしまう。おまけに、胸もドキドキすごい音を立てている。
私はこんなにも取り乱しているというのに、ジョーは至って普通だ。そのままお兄様に向き直り、
「ヘンリー様。失礼ながら、言わせていただきます」
まっすぐに告げた。