吸血鬼の彼女(仮)
放課後が来ちゃったよぉ……。

どーしよぉ…。

中庭に来てって言われたけど地味に行ったことないかも。

どこだっけ?

1階なのは分かるんだけど…。この高校広いしなぁー。

あっ、あった…!

「わぁ…っ。すごいっ。」

中庭にはそれはもう色とりどりの花がたくさん植えられていた。

宝石箱みたい…。

「おそかったな。」

その声で私はここに来た理由を思い出した。

「い、いたんだ夜霧くん…。」

「俺から呼んだんだから当たり前じゃん。」

「そ、そうだよね…っ!」

何をされるんだろうっ?!

いつもの2倍くらい心臓の音が速い。

足も若干震えてる。

「で、さっそくだけど、いい?」

「はいぃ。」

「空咲、俺の彼女になって。」

「……ふぇっ?な、何て?」

「彼女なってって言ってんの。“お試し期間”でもいいから。空咲にもいい事あると思うんだけど。」

「……?」

なんて言った?

“オレノカノジョニナッテ?”

……彼女っ?!

いやいやいや……それはそれぞれお互いに好きになった人がすることじゃないの?

だからそういう意味じゃないのかも……。

「……全然わかってなさそうだな。」

「分かるわけないです……。」

「正直俺もまだ分からないんだけど。………どこから説明しようか…」

「説明お願いします…!」

「まず、吸血鬼には世界に1人だけ“番(つがい)”がいる。もっと分かりやすく言うと“運命の人”だ。
吸血鬼は番を見つけたら基本的にはその人と結婚する。
何でかって言ったらその人となら種族がなんであれ純血で能力の高い子供が産まれるし、だいたい番とは相性がいいから。」

少し間を置いて夜霧くんは続ける。

「……どーしても合わなかったり嫌いだったり、他の人のことが好きになってしまったりしたら、まぁ必ず番とじゃないと結婚したらダメって訳じゃないから番とは結婚しなくてもいい。」

番…!?運命の人?!

吸血鬼ってそんなことがあるんだ…。

私は黙ってただコクコクと頷くことしかできない。

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