彼女に好きな人が出来ませんように
朝読書が終わり、先生が教室に入ってきた。


「えーそれでは、ホームルームを始める前に、お知らせがあります。このクラスに転校生がやってきました!」

「どうぞ、入っておいで」

そう言って先生が教室のドアを開け、手招きした。


一気に教室がどよめく。


皆、どんな子が来るのかあれこれ議論していた。


私は、どんな子が来ようとあまり深く関わることはないだろう。


人見知りなわけではないが、あまり自分からは積極的に話しかけない。
    

話しかけてくれた人と友達になる程度で、今まで深い仲になる人はいなかった。


親友と呼べる人もいない。


ーガラガラ


教室のドアがゆっくりと開く。


中に入ってきたのは、


「こんにちは!」


とても小柄な可愛らしい女の子だった。


髪はショートよりのボブで、ふわふわとゆるく巻いている。


顔が小さくて、クリクリした可愛い目。


何より、笑顔が可愛いと思った。


黒板の前に着くなり、


「田中なつみです!よろしくお願いします!」


と深々とお辞儀をした。


明るくて、礼儀正しい。


とても良い子なんだろうなと思った。


私とは正反対な気がする。


周りもなつみちゃんの可愛さに圧倒されたようで、女子も男子も目がハートになっている。


「じゃあ、田中さんは一番後ろの空いている席に座ってね」

「はい!」

一番後ろの空いている席…


あ、


私の隣だ。


そういえば、この前転校しちゃった子がいたっけ。


大きなリュックを背負って、てくてくと歩いてくる姿もまた可愛らしい。


隣だから何か声を掛けないと。


でも、何て言えばいいんだろう。


よろしくね?


色々考えているうちに、なつみちゃんは私の隣にやってきて、


「隣、よろしくね!お名前何ていうの?」

と明るく声を掛けてくれた。


何だか少し緊張してしまうのは、彼女が転校生だから、だ。


「あ、私は…みずきって言うんだ。よろしくね、なつみちゃん」


すると彼女はニコっと笑った


「みずきちゃん?可愛い名前!!そうだ、みっちゃんって呼んでいい?!」

一瞬、ドキッとした。


今まで、あだ名をつけられたことなんて一度もなかったから。


何だか特別な響きに感じる。


「みっちゃん…いいね、その響き」

「でしょでしょ!ねぇねぇみっちゃんはさ…」

そうして、私達は初日で仲良くなった。


彼女は、今まで出会った他の誰とも違う気がした。


よくわからないけど、彼女は


人を惹きつける不思議な魅力を持っている気がする。
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