彼女に好きな人が出来ませんように
ー数学の授業中。
 

私が定規を床に落としてしまうと、


「みっちゃん、これ。落としたよ!」


と拾ってくれた。


ー理科の実験。


私となつみはグループが離れてしまって、私は一番前の席、なつみは後ろの席に座っている。


「わー!なつみちゃん凄い!うまく行ったねー」

「やったー!ありがとう!私実験好きなんだ!」


後ろから聞こえてくるなつみの声。


さっきから気になって仕方がない。


「うわぁ!みずきちょっと大丈夫?!」

「あ…ごめんごめん」

なつみの声に神経を注いでいたせいで、実験中の手元に集中できていなかった。


チラッと後ろを見てみる。


ただの実験なのに、あんなに楽しそうにするんだ。


気付かないだろうと思ってしばらく見ていたが、


なつみは私に気付いて目が合った。


すると彼女は、ニコっと笑って手を振ってくれた。


私も手を振り返したが、思わず目を逸らしてしまった。


彼女の笑顔があまりにも純粋で、真っ直ぐで。


綺麗だと思った。


…って、授業中に何考えてるんだ、私は。


ー昼休み。


「みっちゃん!一緒にお昼食べよ!」

「うん、いいよ」

「やった!」

私は、ずっと行ってみたかった所がある。

「ねぇなつみ、中庭でお昼食べない?!」

「え、中庭?!行く行く!」

私の学校は中庭でお昼を食べることが許されている。


最初の方は皆行っていたみたいだが、教室から少し遠いため行く人は少なくなった。


ドアを開けると、そこは


「わぁああ!」


綺麗なお花や植物で埋め尽くされていた。


真ん中には、水は出ていないけど座れるような噴水があり、地面にはカラフルなデイジーやチューリップ等が咲き誇っていた。


ドアから噴水までの地面に道ができており、歩けるようになっていた。


「行こ!噴水に座って食べよ」

「うん!!」

美化委員が管理してるって聞いてたけど、ここまできれいだとは思わなかった。


「みっちゃん、ここ最高だよ!連れてきてくれてありがとう!」


そう言って楽しそうにくるくる回っているなつみはとてもかわいかった。


もっと喜ばせたい、綺麗な所をいっぱい見せてあげたいな。


何だかここは、なつみと私の秘密の場所という感じがした。


「なんか、みっちゃんとの秘密基地みたいだね!」

「え、私も今同じこと考えてた」

2人で笑いあった。


「みっちゃんあのさ、」

「ん?」

「今度お出かけしない?2人で!」

お出かけ…2人で…

「え、も、もちろん!」

誰かに一緒に遊ぼうと言われたことは、数えるほどしかなかった。


今までで一番嬉しいお誘いかもしれない。


「やったあー!じゃあ、次の土曜日とかどう?!」

「土曜日、いいね」

「じゃあ11時に、学校集合で!」
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