ハーフ☆ブラザー その瞳もこの唇も、僕よりまいさんの方がいやらしいのに?
5.多香子さんの『お説教』
*****
「はい、どうぞ。気をつけて、持って帰ってね」
ショートケーキが二個入るくらいの小さな箱を『小さなお客様』に合わせ、腰をかがめてまいさんが手渡す。
「ありがとう!」
元気よく言って、顔をほころばせながら『いつかの僕』が現在の僕の横を通りすぎて行く。
小走りの後ろ姿を僕と同様に苦笑いしながら見送っていたまいさんが、僕の存在に気づき表情をガラリと変えた。
他にお客さんの気配のないのを見届け、僕のほうへ歩み寄ってくる──うさんくさいものでも見るように。
「ちょっと。あんた、なに見てんのよ?」
「───うわー、まいさんヒドイよ、いまの表情。聖母マリア像が阿修羅像にすげ替えられたくらい、ヒドイよ」
「……それは確かに酷いわ」
片手で顔を覆ってガックリと肩を落としたまいさんに、冗談だよ、と、笑ってみせる。
「まいさんが僕に見せてくれる顔は、全部僕の宝物だから。気にしないで、いろんな顔を見せて?」
「───もうっ! 私、仕事中なのに、バカなこと言って……!」
照れ隠しのように僕の背中を叩くと、まいさんは赤くなった頬を手の甲でなでながら、お店の中へと戻って行った。
「カレシくん、ちょっといい?」
まいさんの接客姿をひとめ見て満足した僕は、いつもの定位置であるセンターコートの片隅にあるベンチへ行こうとした。
けれどもその前に、多香子さんに呼び止められる。
「はい、どうぞ。気をつけて、持って帰ってね」
ショートケーキが二個入るくらいの小さな箱を『小さなお客様』に合わせ、腰をかがめてまいさんが手渡す。
「ありがとう!」
元気よく言って、顔をほころばせながら『いつかの僕』が現在の僕の横を通りすぎて行く。
小走りの後ろ姿を僕と同様に苦笑いしながら見送っていたまいさんが、僕の存在に気づき表情をガラリと変えた。
他にお客さんの気配のないのを見届け、僕のほうへ歩み寄ってくる──うさんくさいものでも見るように。
「ちょっと。あんた、なに見てんのよ?」
「───うわー、まいさんヒドイよ、いまの表情。聖母マリア像が阿修羅像にすげ替えられたくらい、ヒドイよ」
「……それは確かに酷いわ」
片手で顔を覆ってガックリと肩を落としたまいさんに、冗談だよ、と、笑ってみせる。
「まいさんが僕に見せてくれる顔は、全部僕の宝物だから。気にしないで、いろんな顔を見せて?」
「───もうっ! 私、仕事中なのに、バカなこと言って……!」
照れ隠しのように僕の背中を叩くと、まいさんは赤くなった頬を手の甲でなでながら、お店の中へと戻って行った。
「カレシくん、ちょっといい?」
まいさんの接客姿をひとめ見て満足した僕は、いつもの定位置であるセンターコートの片隅にあるベンチへ行こうとした。
けれどもその前に、多香子さんに呼び止められる。