ハーフ☆ブラザー その瞳もこの唇も、僕よりまいさんの方がいやらしいのに?
僕の姿を見るなり複雑な表情を見せたまいさんだけど、ポスターのような物を手早く丸めながら仕方なさそうに言った。

「あんた、多香ちゃんの言うこと、ちゃんと聞きなさいね! ごめん、多香ちゃん、あと任せた!」

書類と筒状の紙を抱えこむと、まいさんは僕の横を通り抜け、店の外の通路を走って行った。

え、まいさん? ……って。僕は、どうしたら?

よく解らない状況に立ち尽くしていると、売場から製造室にやってきた多香子さんが、にっこりと笑った。

「とりあえず、外側からショーケース()いてもらえるかな?」

薄い布と、ガラスクリーナーを手渡された。

……ええっと。多香子さんの言うことを聞く、だったよね、まいさん?

まいさんの立ち去り際の言葉を思いだし、僕は素直にガラス拭きを開始した。


*****


結論からいうと僕は、インフルエンザにかかってしまった従業員さんの代わりに駆り出されたらしい。

今日一日はともかく、年末年始のギフトが大量に動く時期に人手は絶対的に必要で。

かといって今すぐ募集しても、面接などの時間を割くのが惜しいらしく──多香子さんがまいさんに、僕のことを推薦したそうだ。

「舞さん、ああいう人だから、公私の区別つけたがるでしょ?
だから最初はしぶってたんだけど……あたしが無理やり押し切っちゃったんだー。
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