ハーフ☆ブラザー その瞳もこの唇も、僕よりまいさんの方がいやらしいのに?
微笑んで応えると、多香子さんは軽くうなずき手にしていたファイルを棚にしまった。
腰に両手をあて、僕を振り返る。

「よし。これにて、お仕事は終~了~っ。舞さん帰ってくるまでお茶にしよっか」

多香子さんは製造室の片隅に置かれたテーブルを指し示した。

折りたたみ式の丸椅子を用意してくれ、座るようにうながされる。

僕にコーヒーか紅茶かの好みを尋ねると、シュークリーム同様、店の看板商品であるロールケーキを二切れカットして、僕の前に置いてくれた。

「うーん……思ってた以上に、時間かかってるなー」

製造室の壁時計を見上げ、多香子さんが独りごちる。

まいさんは、ショッピングセンター内の食品部とやらの会議に行ったらしい。

あんなにバタバタしていたのは、あてにしていた従業員さんが急な病欠になり、日中に進められたはずの会議用資料などの準備ができずにいたからのようだった。

「まぁ、舞さんいないほうが、話しやすいか~」

言って多香子さんが、コック服のポケットから一枚の紙片を取り出した。

僕に見せるようにテーブルの上で、つっ……とすべらせる。

僕は、()れてもらったコーヒーをすすりながら、何やら書かれたそれに目を落とす。

───明らかに、男性の名前とその連絡先だった。
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