ハーフ☆ブラザー その瞳もこの唇も、僕よりまいさんの方がいやらしいのに?
「どうして怒らなきゃいけないの? まいさんと一緒に過ごせる時間が増えて、すごく嬉しいのに。
自分の気持ちに逆らってまいさんを責めるだなんて、僕にはそういう趣味は、ないからね?」

ふふっと笑う僕の顔に、まいさんが指をつきつけてきた。

「───言っとくけど、時給、すんごく安いわよ?
おまけに、臨時雇いで期間だって短いし。高校生ってコトで、さらに値切られるんだからね!」

「そうなんだー、良かった。じゃあ僕、お買い得ってことだよね?」

スーパーの安売り(トーク)でもするかのようなまいさんに応えて、片目をつぶってみせる。

そんな僕を見上げ、まいさんが眉根を寄せた。唇を、すぼませる。

「あんたって……本当……っ……」

いまにも泣きだしそうな顔を見せたのは、一瞬で。気づいたら僕は、まいさんに抱きつかれていた。

……えぇっと。
まだ職場から50メートルくらいしか離れてないけど、いいのかな?
もちろん僕は、いいんだけど。むしろ大歓迎。

まいさんのほうからぎゅっとしてくれるなんて、なかなかないシチュエーションに、僕の心臓が痛いほど脈うつ。

息苦しいくらいに幸せな鼓動をなだめるように、まいさんの髪に指をからめて引き寄せ、もう一方の腕で身体の自由を奪う。
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