ハーフ☆ブラザー その瞳もこの唇も、僕よりまいさんの方がいやらしいのに?
広さは約六畳くらいで、他にあるのは包装するために置かれた折りたたみ式の長机と椅子だけだった。

窓もない白い壁に覆われた室内は、出入口のためにひとつ扉があるくらいで、かなりの圧迫感があった。
そんな空間に、まいさんと二人きり。

だけど僕は、まいさんとの当初の約束通り『仕事中は店長と新人アルバイトとして接すること』を、忠実に守っていた。

「あんたといると、私のきずいてきたイロイロなものが壊されていくわ……」

大げさに溜息をついて肩を落とすまいさんに、使わずにいた椅子を、差し出した。

「どうぞ、店長。お疲れのようですから少し休憩なさってください。代わりに僕が、店長の分まで包装しますから」

「───もうっ、解ったわよ! この部屋にいる時は敬語なし! お店に出た時と、他の従業員の前だけでいいから!」

意外にも早いまいさんのギブアップに、内心ちょっとがっかりした。

けっこう僕は、この『設定』気に入っていたんだけどな。

まぁ、まいさんのお許しが出たなら、それはそれで、違う楽しみ方もあるか。

なんて思いながら、僕はまいさんが詰め合わせてくれた箱を受け取り、包装する作業を始めた。


*****


「恐れ入りますが、あちらに並んでいただけますか?」

『シャル・エト』の店の造りは従業員泣かせにできている。
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