ハーフ☆ブラザー その瞳もこの唇も、僕よりまいさんの方がいやらしいのに?
通常であれば三方からのお客さんに、対面接客をするようになっているけれど、今の時期はケーキ売場だけの会計にしぼっていた。
でないと、横入りしようとするお客さんがいたりして、収拾がつかないからだ。
現に、包装を終えた商品を並べに来ただけの僕に、
「ちょっとお兄さん。ね、これ一箱だけだから会計してくれる?」
なんて、声をかけられたりもするくらいに。
まいさんから、
「お客様から声かけられたら、会計口へ誘導するだけでいいからね?
笑顔で『いらっしゃいませ』って言いながら品出しして、さっさとストックルームに戻っていいから」
と、念を押されていたので、空になった台車をひき、すぐさまストックルームに戻ろうとしていた。
ところが、そんな僕のセーターの背中をつかんで引きとめる人がいて、あわてて笑顔を向けた。
「申し訳ございません、お客様───」
「ね、大地ちゃんじゃない? 亜由美さんとこの」
いきなりだされた名前に面食らって、声の持ち主を見返す。
「えっと、あの……」
「やっだ、大きくなっちゃってぇ。
えー? いまいくつ~? 高校生くらいには、なるわよねぇ」
派手な化粧と髪型、香水。あきらかに水商売風の、三十代半ばくらいの女性だった。
付け爪と分かる指先が押さえたあごにあるホクロに、過去の記憶がよみがえる。
でないと、横入りしようとするお客さんがいたりして、収拾がつかないからだ。
現に、包装を終えた商品を並べに来ただけの僕に、
「ちょっとお兄さん。ね、これ一箱だけだから会計してくれる?」
なんて、声をかけられたりもするくらいに。
まいさんから、
「お客様から声かけられたら、会計口へ誘導するだけでいいからね?
笑顔で『いらっしゃいませ』って言いながら品出しして、さっさとストックルームに戻っていいから」
と、念を押されていたので、空になった台車をひき、すぐさまストックルームに戻ろうとしていた。
ところが、そんな僕のセーターの背中をつかんで引きとめる人がいて、あわてて笑顔を向けた。
「申し訳ございません、お客様───」
「ね、大地ちゃんじゃない? 亜由美さんとこの」
いきなりだされた名前に面食らって、声の持ち主を見返す。
「えっと、あの……」
「やっだ、大きくなっちゃってぇ。
えー? いまいくつ~? 高校生くらいには、なるわよねぇ」
派手な化粧と髪型、香水。あきらかに水商売風の、三十代半ばくらいの女性だった。
付け爪と分かる指先が押さえたあごにあるホクロに、過去の記憶がよみがえる。