ハーフ☆ブラザー その瞳もこの唇も、僕よりまいさんの方がいやらしいのに?
「……雛子(ひなこ)さん、ですか?」
「そぉ! 覚えててくれた? やっぱ大地ちゃん、良いコよねぇ。
───あ、そうそう。亜由美さん、残念だったわね……。お葬式にも行かないで、ごめんなさいね。亡くなったの知ったの、けっこうあとだったし」
「いえ、内うちに形だけ済ませたので、お気になさらないでください」
言って、話を切りあげるつもりだった。何しろ、仕事中なのだから。
けれども雛子さんのほうは、話足りない素振りで僕の腕をつかんだ。
「ちょっと聞いたんだけど……大地ちゃん今、佐木さんちに厄介になってるんだって?」
「えぇ、まぁ……。あの、すみません、僕いま、バイト中なので」
頭を下げて立ち去るつもりで、つかまれた腕を外そうとした時、雛子さんが僕の耳にささやいた。
「亜由美さん大地ちゃんに、本当のこと言わないで()っちゃったの?」
僕は反射的に雛子さんを見返した。そのつもりはないのに、にらみつけるようになっていた。
「やぁだ、怖い顔しないでよぉ。オバサン、大地ちゃんの味方なんだから。
亜由美さんが佐木さん頼ったの、分かる気がするもん。大地ちゃんの将来考えたら、経済力が安定してるほうがいいに決まってるもんね」
「───失礼します」
強引に話をさえぎって、僕はその場を立ち去った。
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