ハーフ☆ブラザー その瞳もこの唇も、僕よりまいさんの方がいやらしいのに?
いつもは真向かいに座ることが多いだけに、お父さんとの距離が近いことにほんの少し緊張しながら、口を開く。
「おととい……母の昔の知り合いに、会ったんです」
切りだした言葉に、わずかに眉を上げたものの、お父さんは目線で僕の話の続きをうながした。
「ずっと僕は、お父……───佐木さんの好意に、甘えてきました。
血のつながりのない赤の他人だと判ってからも、ずうずうしく、お世話になり続けて……こちらに、居座り続けて」
僕は、息をついた。
どう話そうかと頭のなかで整理して、声をかけたはずなのに。
お父さんの真剣な眼差しと、僕に向き合う真摯(しんし)な態度に、話さなければならないことより先に、自分の気持ちが先走ってしまうのを感じた。
「僕は……佐木さんのことをずっと『お父さん』だと信じて疑わなかったから……鑑定結果を見た時、何かの手違いがあって、間違った結果が送られてきたんだって、思いました。
大学病院に問い合わせかけて……でも同時に『お父さん』が『お父さん』でないという事実に、妙に納得してしまう自分も、いたんです」
そうだ、あの時───。
僕は、『お父さん』やまいさんという『お姉さん』の存在に、すがって生きていた自分に気づいた。
だけど僕は、たった一枚の紙切れに記された『親子でない』という証によって、いままで積み重ねてきた想いのすべてを否定された気がしたんだ。
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