ハーフ☆ブラザー その瞳もこの唇も、僕よりまいさんの方がいやらしいのに?
「僕は、佐木さんの『息子』で……まいさんの『弟』で、いたかったんです。
そうでなければ、僕のそれまでの十七年は……いったい、なんだったんだろうって……」
言いかけて、首を振る。違う、こんなことを言いたかったんじゃない。
「僕は……僕、は……」
言葉が、でてこない。僕は、ただ───。
瞬間、お父さんの顔がゆがんだのが見えたかと思うと、力強い腕に引き寄せられていた。
「すまなかった、大地くん……!」
かすれた響きの声が、僕の耳に届く。
「君が、そんな風に思い悩んでいただなんて。もっと早く、気づいてあげられていれば……。
私は、君が以前と変わらず『お父さん』と呼びかけてくれるのが嬉しくて……君の心の内側にある想いにまで、考えが及ばなかった。
本当に、申し訳ないことをした……」
「違います! 謝らなければいけないのは、僕なんです。
僕と、僕の母の身勝手な想いで……僕たち親子は、佐木さんにたくさんの迷惑をかけてしまって」
身を起こして、言い募ろうとした僕に、お父さんが微笑んで首を振る。
眼鏡の奥の瞳が、優しく細められていた。
「それこそ、違うんだよ、大地くん。
亜由美さんが君を私のもとに寄越してくれたこと───彼女が、私を忘れずにいてくれたこと。最後の最後で、私を頼ってくれたこと。
君という、かけがえのない存在を、私に託してくれたことは……」
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