ハーフ☆ブラザー その瞳もこの唇も、僕よりまいさんの方がいやらしいのに?
ぽすん、と。僕の頭の上に、お父さんの手のひらが置かれた。
「私が今年もらった、最上級の、贈り物だよ」
僕は、うつむいた。まばたきをすると、涙がこぼれ落ちた。
「……僕は『お父さん』の……『息子』でいても、いい、ですか?」
真実(ほんとう)に伝えたかったのは、そのひとことだけ。
数ヶ月前の親子鑑定の結果を受けたあと、僕のなかにあったのは、生物学的なつながりのある『父親』への関心じゃなかった。
───初めて会ったあの日。
あの人からの手紙を渡した時に、驚きつつも笑いかけ、僕という存在を受け入れてくれた『お父さん』への想いのほうが、強かった。
たとえ血のつながりはなくても、僕にとって真実『お父さん』と呼びかけることができるのは、目の前にいる、お父さんだけだった。
だからこそ僕は、きちんと言葉にして確認することを恐れ、今まで曖昧(あいまい)にして日々を過ごしてきていたんだ。
───お父さんから拒絶されるかもしれない可能性があることを考えたら、そんなこと、おくびにもだせなかった。
だったらせめて、この夢のような生活を自分から壊すような真似をせず気づかぬふりでやり過ごしていたかった。
頼りなくうつむいたままの僕の身体は、ふたたびしっかりと、お父さんに抱きしめられた。
「君さえよければ、いつも、いつまでも、君は私の『息子』だよ。いままで通り『お父さん』と呼んでくれ。
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