ハーフ☆ブラザー その瞳もこの唇も、僕よりまいさんの方がいやらしいのに?
「……どうぞ」
応えると、顔をのぞかせたのはやっぱりまいさんで。さきほどの、怒りとも寂しさともつかない表情のまま僕を見た。
「おそば食べないと、年越せないでしょう? せっかく……あんたが、作ってくれたんだし」
「……うん」
ぎこちなく微笑み返して、扉のほうへ向かう。
まいさんはそこで待ち構えるようにして、じっと僕を見上げてきた。
「あとで……あんたの部屋に、来てもいい?」
お父さんの耳を気にしながらのささやきは、いつもなら諸手(もろて)をあげて喜ぶべきところだけど。
……僕は、お父さんとのことを見られたのが気まずくて、素直にうなずけなかった。
あえてはぐらかすように、ふふっと笑ってみせる。
「ダメだよ、まいさん。お父さんに見つかったら困るのはまいさんのほうなんだから。僕たちのヒミツの関係は」
まいさんは、ムッとしたように顔をしかめた。
「何よ、自分の都合の悪い時にだけ、そんなこと言って。いいわよ、そっちがその気なら、覚えてなさいよっ!」
大昔のドラマヒロインの敵役のような捨て台詞を残し、まいさんはダイニングへと行ってしまった。
……困ったな、どうしよう……。
本来なら和やかに年越しそばを食べる家族団らんの図になるはずが、まいさんの逆鱗(げきりん)に触れてしまった僕のせいで、ピリピリとした食卓になってしまった。
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