ハーフ☆ブラザー その瞳もこの唇も、僕よりまいさんの方がいやらしいのに?
お父さんが雰囲気を変えようとして話しかけても、まいさんの答えは、
「ふーん。あっそう」
という、ものすごく冷めた反応でしかなく。
救いを求めるようなお父さんの眼差しに、僕が取り繕うようにフォローをしても結果は同じだった。
───まいさんは、時々ひどく大人げないと思う。
けれどもそれは、僕やお父さんに対して限定の態度で。まいさん流の甘え方なんだって、僕もお父さんも、知っているから。
僕とお父さんは、ひたすら『舞美女王様』のご機嫌をとる、しがない家来のAとBでしかなかった。

*****

気まずいムードのなか除夜の鐘を聞き、年を越して。まいさんのご機嫌は、相変わらずナナメ45度を向いたままだったけど。
ずっと言えずにいた胸のつかえを『去年』のうちにおろすことができた僕は、安心してベッドに横になることができていた。
そこへ、耳をすまさなければ聞こえないようなノックの音と、
「大地? まだ起きてるんでしょ? 入るからね?」
という、まいさんのひそひそ声がかかり、あわてて寝たふりをした。
僕のなかにあった気まずさは、まいさんの大人げない態度によってだいぶ緩和されていた。
だから、まいさんが予告通り部屋に来てくれたことに、いたずら心を起こしていた。
目を閉じて、静かに寝息を立てる風を装い、まいさんの気配にだけ集中する。
ベッドに近寄ってきたらしいまいさんが小声で言った。
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