ハーフ☆ブラザー その瞳もこの唇も、僕よりまいさんの方がいやらしいのに?
「ちょっと。ホントに寝ちゃってたりするの? 自分だけスッキリした気分で、眠れてたりするわけ?」
まいさんの独りごとは、どこまでも不愉快さを隠しきれてなくて。
僕はまいさんへのいたずら心を変更して、なんとか機嫌を直してもらうほうへと考えを修正しようとした。
その、次の瞬間。まいさんが、大きな溜息をついた。
「じゃあ……もう本当に、悩みごとはなくなったのよね?」
ぽつり、と。こぼれ落ちたささやきは、僕の顔のすぐ側で聞こえた。
軽く沈む枕もとは、まいさんがひじをのせたのかもしれなかった。
「ここ何日か、あんた元気なかったから、何か思い悩んでるんだって気になってたのよ。
だから私……ずっと、待ってたのに。
あんたにとっての一番の理解者は、私なんだって勝手に自負していたから。あんたが父さんに引っ付いてるのを見た時、半分本気で父さんに嫉妬したわよ、私」
自分の言葉に少し笑って、まいさんは僕の頬に触れた。大切なものに触れるような、優しい手つき。
……僕のなかにあった気まずい思いが、よみがえってきた。
「でもね……あんたが、いまみたいに幸せそうな顔をしていられるのは、父さんのおかげなんでしょ?
良かったね、大地。あんたには、これからたくさん、イイコトが待っているんだからね?
独りで抱えこまないで、父さんにでも私にでも、きちんと話しなさいね?」
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