ハーフ☆ブラザー その瞳もこの唇も、僕よりまいさんの方がいやらしいのに?
「───ありがとう、まいさん」
僕を想うあたたかな言葉の数数に、黙っているのが申し訳なくて口をひらく。
頬にあるまいさんの指先に手を伸ばして、まぶたを上げた。
薄明かりのなか、僕を見つめるあきれたような……それでいて、愛おしげな表情のまいさんと、ばっちりと目が合った。
「やっぱり、起きていたのね?」
「うん。……ごめんね、心配かけて」
身体を起こして、まいさんと向き合う。瞬時に仏頂面へと変わったまいさんの空いた手が、僕の胸を軽く突き飛ばす。
「何が、ごめんね、よ。頼ってほしい時に、父さんのほうに行っちゃってさ。二人だけで解決しちゃってて……私、すっかり蚊帳の外じゃない。私がどれだけ悔しかったか、あんたに解る?」
「うん……」
「『うん』じゃないでしょ? もうっ……ばかっ……」
甘えるような響きの声が、僕の胸の奥にあるものを、ぎゅっとつかまえる。
それは、とても幸せな束縛で。僕は、僕の頬を優しくなでてくれた指先に、唇を寄せた。
「でもね……僕の『一番』は、ちゃんとまいさんだから。それだけは、解ってほしいな。
だって、お父さんは『お父さん一人』だけだけど……。まいさんは、僕の『母親』で『お姉さん』で『恋する人』の三役も担ってるんだから。たまには僕の『相手役』をお休みしたって、いいでしょう?」
僕の言葉に、まいさんはいまいましそうに鼻を鳴らした。
< 47 / 62 >

この作品をシェア

pagetop