ハーフ☆ブラザー その瞳もこの唇も、僕よりまいさんの方がいやらしいのに?
「まいさん、ごめ───」
「そこ、謝るとこじゃないからね?」
肩口に手をかけたとたん、顔を伏せたままの状態のまいさんから、じろりとにらまれた。
「あんたに、ちょっと特別な女の子がいたって、そんなこと……なんの不思議もない話だし。
むしろ今まであんたの口から女の子の名前がでてこなかったほうが、不自然なくらいだったんだから。
これは……私の自分勝手な独占欲からくる、嫉妬なのよ。
───醜いうえに、なんて心が狭いの、私! もうっ……、ホントにヤな女!」
途中から悔し泣きをするような声音になるまいさんの様子に、せつなさと愛しさが奇妙に入り混じって、僕の胸を焦がした。
まいさんの肩を抱き寄せずには、いられなくなる。
「……あのね、まいさん。本当に嫌な人間は、自分のことを『嫌な奴』だなんて、省みない人のことをいうんだよ? 第一、それを言ったら僕だって」
言いながら、テレビのリモコンに手を伸ばし、電源を落とした。
「まいさんが好きな芸能人が僕と全然違うタイプで、正直、面白くないんだよ」
「……あんた、どっちかっていうと、王子系だしね」
「───自分が男っぽい顔立ちじゃないのは、重々承知しているからね。
もう一人のほうが好き、って言われてれば、ちょっとは気分良かったけど」
僕の言葉に、くすっと笑うまいさんにホッと息をつく。
……良かった、笑ってくれて。
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