ハーフ☆ブラザー その瞳もこの唇も、僕よりまいさんの方がいやらしいのに?
「お父さんもいないし……今夜は、まいさんを眠らせなくても、いいよね?」
耳もとでささやくと、一瞬ためらった気配がしたけれど、
「少しは寝かせてよ。明日休みだけど、バレンタインの売場作りに行かなきゃいけないんだから」
なんて、色気のない返事をくれた。
……うん。いつもの、憎らしいくらい愛しい僕のまいさんだ。

*****

厚いカーテンに覆われなかったわずかな隙間。レースのカーテンから射しこむ陽の光が、幸せそうな寝顔のまいさんを照らしていた。
───しなやかで優美な獣のような姿態も、僕の上でみだらに腰をくねらせていた悩ましげな表情も。嘘みたいに、脱ぎ捨てられて。
無邪気すぎる寝顔は、そのすべてが、僕の夢想であったかのように清麗だった。
光のまぶしさに小さな声をもらして、まいさんが寝返りをうつ。なよやかな肩のラインがあらわになって、僕の溜息を誘った。
───夢みたいに、幸せで。夢のように、美しくて。
いつも、僕の胸にある想いは、この夢がいつまでも続いてくれたらと、願うことだった。
「……風邪ひいちゃうよ、まいさん」
そんな口実で、もう一度まいさんを抱き寄せて。あたたかな体温を共有して。
僕は、ふたたび『夢のなかの夢』へと、潜りこむ。

*****

「ちょ、ちょ、ちょっと、大地っ……! 起きなさいよ、遅刻しちゃうわよ!?」
「ん~……大丈夫だよ、まいさん。僕、一時限目はサボりの予定だから……」
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