ハーフ☆ブラザー その瞳もこの唇も、僕よりまいさんの方がいやらしいのに?
「何が大丈夫なのよっ。それ、全然大丈夫とは言わないでしょ! ってか、離しなさいよ、くっつき過ぎでしょ、コレ!」
「だってまいさん、あったかくてやわらかくて、気持ちいいし……」
僕の腕を、バシバシと遠慮なく叩きまくるまいさんの手に指を絡め、自由を奪う。
「だから、あと少し……僕に夢を見させてほしいな」
「とっくに目ぇ覚めてるのに、なにアホなこと言ってんのよっ。寝ぼけてないで、早く支度するわよ?」
僕の腕のなかでもがきながら、まいさんがあきれたように息をつく。
ちょっと笑って、僕はまいさんの頬に唇を寄せた。
「……ね、『邯鄲(かんたん)の夢』って、知ってる?」
唐突すぎる質問は、思惑通り、まいさんの動きを止めさせた。
身体をひねって、僕を見返してくる。
「───朝っぱらから頭使わせないでくれる? ……なんだっけ……人生のはかないことの例え、だったっけ?」
難しそうに眉を寄せるまいさんが可愛いらしくて、とりあえず『おはようのチュー』をしてから「ほぼ正解」と微笑む。
盧生(ろせい)っていう青年が、邯鄲の都で仙人から借りた栄華が思いのままになるっていう枕で、人生一代の栄華を極める、ものすごく長い夢を見るんだけど、目覚めたら(あわ)を煮炊きするくらいの短い間だった───……っていう、中国の故事だよ」
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