ねこねこ幼女の愛情ごはん〜異世界でもふもふ達に料理を作ります!〜6
 さて、青弓亭の朝食メンバーはあともうひとり、黒豹のヴォラットがいるのだが、彼はとある仕事を任されて出張している。

「今朝はチリドッグ、っていうピリ辛の美味しいパンだっけ? ヴォラットは食べられなくて気の毒だね」

 気のいい犬のマイクが言った。彼はいつの間にかお手伝い用のエプロンを身につけて、ごはん作りに参加する気満々である。

「新しくできたトンネルの調査に、なんで王都警備隊員が行くのかわからないけど……」

「ああ、それは、アレだ」

 不思議そうなマイクの言葉を、ルディが遮った。

「その、我が国とフィフィール国を繋ぐトンネルなので、政治的なアレとか、妖精的なアレとか、国関係のしがらみがいろいろあるからな。それでヴォラットに『とどめの矢』が立ったというわけだ」

「そっか、宰相がお父さんだからかー、それじゃあ仕方がないね」

「うむ。仕方がない」

 頷くルディを横目で見ながら、エリナはミメットに「とどめの矢?」と小声で尋ねた。彼女は「大変な仕事をするために、腕のいいアーチャーに選ばれたっていう意味さ」とこっそり教えてくれた。エリナの脳裏には、頭のてっぺんにさっくりと矢が刺さり、仏頂面をしている黒髪のイケメンが浮かんでしまい、吹き出しそうになるのを堪えた。
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