ねこねこ幼女の愛情ごはん〜異世界でもふもふ達に料理を作ります!〜6
 ルディは前脚を持ち上げると、子猫の頭をそっと肉球で撫でて起こそうとした。フェンリルは妖精獣なので、肉球はとても柔らかなのだ。しかし、その行動は逆効果であった。頭を撫でられたエリナは「ふにゅ」と鳴くと、全身でルディのマズルの上にもたれかかって本格的に眠り始めてしまったのだ。

『くううううううっ、可愛いにも程があるだろう!』

 鼻先に子猫の柔らかな頬を擦りつけられて、湧きあがる幸福感に戸惑いながら彼は身を震わせた。

 そして、フェンリルの本能が子猫の全身を舐めろと叫ぶが、落ち着きのある男性である自分は『それはダメだ』と必死に止める。
 いや、身繕いは獣人の家族同士ならば許される行為なのだから、決して非常識ではない。だが、実はエリナは別の世界からこの世界に妖精となるためにやって来た少女なのである。そして、別世界の星、地球では人間だったのだ。
 普通の人間の常識では、異性間の舌による身繕い行動は違った意味を持ってしまうことを、彼はよく知っていた。

 スカイヴェン国には獣人がたくさん住んでいるが、その他に普通の人間もエルフもドワーフも魚人や人魚もおまけに精霊も、とにかく様々な人種が生活している。この国の王都警備隊長であり第一王子でもあるルディは、人によって違う常識についての知識もきちんと身につけていた。
 ちなみに、獣人が魚人を舐めることは『お前をおやつに食ってやろうか』という最大の侮辱行為なのだった。

「ふにゅうん」

 全身でしがみつきながら、彼の鼻先をちっちゃくにぎにぎし始めたエリナに「んむう、んむう、んむうううっ」と口を閉じたまま訴えて、なんとか目を覚ましてもらおうと努力するルディであった。
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