好き避け夫婦の秘めごと 7年越しの初夜

精神安定剤?
処方されたと言うからには、病院を受診して何らかの診断が下ったということか。

いつも愛らしい笑顔でいるから、彼女が病気を患っていることすら気付かなかった。
いや、知ろうともしていなかった。

篁家の令嬢だから、俺とは住む世界が違うとばかり。
だからあまり深入りせずに、俺の欲まみれの世界に引き込んでしまわないように無意識に彼女との間に壁をつくっていた。

7年の歳月の中で、蟻んこ並みだが彼女に歩み寄ったつもりだった。
それすらも彼女にとったら心労が蓄積していた、ということか?

「具体的な病名や診断名とかはあるんですか?」
「申し訳ございません。プライベートなことなので、私には分かりかねます」
「えっ、彼女の執事ですよね?いつも一緒にいるのに、分からないんですか?」
「……申し訳ありません」

何だよ。
何のための執事だよ。

あれだけ毎日四六時中そばにいて、肝心なことが分からないって。

いや、知ってても、俺には言えないってことか?
そうだろうな。
彼女にとったら、俺なんて『同居人』でしかない。

現実を突き付けられる度に心臓をめった刺しにされる思い。
脳内では理解しているつもりなのに、欲がどうしても払拭できなくて。

「士門様」
「……」
「お嬢様の病名は分かりませんが、受診したのは神坂総合病院の婦人科です」
「……え、婦人科?精神科じゃなくて?」
「はい。旦那様から一度精密検査を受けるようにと仰せつかり、私がお連れ致しました」
「……」
「お嬢様のご判断でご自身のみが検査結果を聞く形となり、旦那様には『異常なし』と報告致しました」

えっ、一体どういうこと?
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