好き避け夫婦の秘めごと 7年越しの初夜
限界突破とカミングアウト

あれ?
ここどこ?

あっ……そうだ。
ALKの創立記念の祝賀会に出席してたんだったわ。

薄暗い見慣れぬ景色の中、気怠い体を起こす。

「痛っ……。今、何時だろう…」

腰にチクっと鋭い痛みを感じた。
ドレスを着たまま寝てしまったから、ファスナーの金具が当たっていたようだ。

「二谷っ、……二谷いる~?」

胡桃が声を上げると、すぐさま寝室のドアが開き、二谷が駆け寄って来た。

「ご気分は如何ですか?」
「今何時?早く戻らないと式典が終わってしまうわ」
「……もう終わっている頃かと」
「へ?」
「先ほど士門様がお見えになり、お嬢様をそのまま休ませておくようにと」
「……」

完全に彼に『用無し』だと思われしまった。
ううん、最初から当てになんてされてなかったんだわ。

彼が手配してくれた部屋で30分くらい休もうと思っていた。
けれど、彼の言葉に心を抉られて。
気づいた時には過呼吸気味になっていて。
二谷が手当てしてくれ、安定剤を服用した。

「私のバッグはあるかしら?」
「はい、すぐにお持ち致します」

髪に手を滑らせる。
綺麗にセットしてあった髪が崩れている。

「お水もお持ち致しました」
「……ありがと」

寝室の灯りが付けられ、グラスに半分ほど注がれた水が差し出される。
気を落ち着かせるために、それを一口だけ口にした。

バッグの中からファンデーションのコンパクトを取り出し、自分の顔を映す。
予想通り、酷い顔だわ。

式典が終わってしまったのなら、このホテルにいる必要もない。
休むだけなら自宅の方がゆっくりできる。

「二谷、帰る前に、ちょっと背中を見てくれるかしら?」
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