好き避け夫婦の秘めごと 7年越しの初夜
「具合はどう?」
「……もう大丈夫です」
ベッドの上にいる彼女の元へ。
突然の俺の登場に驚きを隠せないようだが、それもそうだろう。
今までなら二谷に全てを任せて、俺は自分を優先にしていた。
彼女のことを心配に思いつつも、俺よりも二谷の方が何でも彼女のことを知っているし、頼りになるだろうと。
だけど、それが間違っていたんだ。
幼い頃からずっと一緒にいる二谷が、彼女のことを熟知しているのは当たり前。
俺はある日突然『夫』になっただけなんだから。
知らなくて当然だし、俺らの間に壁があるのも当たり前だ。
だから、今日を境にその壁を全てぶち壊すつもりだ。
「さっき、……ファスナーがどうとか言ってたけど、どういう意味で言ったの?」
「へ?」
「着替えるために、二谷に脱がして貰いたかったってこと?」
「……」
「黙ってるってことは、肯定と取るよ?」
「ッ?!……ち、違います」
「じゃあ、どういう意味?」
「……」
二人の会話に苛つかないとは言い切れない。
だけど、尋問するみたいに問い詰めたいわけじゃない。
「ごめん、きつく言い過ぎた」
「……」
胡桃さんのことは世界で一番大事にしたい。
妻であるわけだし、俺を夫として選んでくれたわけだから。
例えそれが、形だけだと割り切ってスタートした結婚生活であったとしても。
「二谷から聞いたよ」
「へ?」
「今まで嫌な思いや辛い思いを沢山させてしまって、本当に申し訳ないと思ってる」
「……」
「今夜はちゃんと二人で向き合って話し合いたいんだけど、……いい?」
「……はい」