好き避け夫婦の秘めごと 7年越しの初夜

彼女の背中の下(腰に近い部分)にあるファスナーを下ろす。
二谷に脱がして貰いたかったわけじゃなくて、金具が当たって傷ができているのを確認して貰いたかっただけらしい。

それでも、俺以外の男に触れられて欲しくない。

「擦り傷というより、皮膚が少し剥がれてる。これじゃあ、痛くて当然だよ」

彼女の綺麗な肌に傷をつけてしまったのも、元はと言えば俺が元凶のようなものだ。

「しみるかもしれないけど、シャワー浴びれる?その間に薬とか必要なものを買って来るから」
「……すみません」
「夫婦に遠慮は不要だよ」
「っっ……」

彼女を部屋に残し、すぐ近くにあるドラッグストアへと向かった。

消毒液と軟膏、一応絆創膏をカゴに入れる。
それから、自分用の下着と女性用の下着も。

着替えやメイク道具は、明朝にあの男が届けるだろう。
それ以外に必要なものをざっとカゴに入れてレジへと向かう。


四つ星ホテルのセミスイートだから、一通りのアメニティは揃っている。
彼女の肌に合うかは分からないが、今夜くらい緊急事態ということできっと彼女は我慢してくれるだろう。

篁家の令嬢だけれど、目に付くような高飛車な態度を取ったことは一度もない。
世間知らずなところはちょいちょいあるけれど、そんなものは可愛いうちに入る。



部屋に戻ると、まだ入浴中なのか。
彼女の姿はリビングにも寝室にも無かった。

春親に連絡を入れる。
翌日の午前中に予定している会議をリスケするようにと。

「お先にお風呂頂きました」

バスローブ姿の彼女が現れ、リビングのソファへと手招く。
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