好き避け夫婦の秘めごと 7年越しの初夜
「ちょっとしみるかもしれないけど、我慢してね」
「……はい」
俺に背を向ける彼女のバスローブをそっと肩から脱がす。
当然のように下着すらつけてなくて、色白の背中が俺の視界を釘付けにする。
彼女は恥ずかしいのか。
両手で必死に胸元を隠していて、僅かに肩が震えている。
二谷には背中を堂々と見せようとしてたのに。
俺には緊張するって……。
「っ……」
「ごめん、痛いよね」
「だ、大丈夫です」
消毒液を含ませたカット綿で軽く叩き、擦り傷用の軟膏を塗布する。
「一応、絆創膏も買って来たけど、貼る?」
「……お願いしてもいいですか?」
「もちろん」
小指の頭ほどの大きさに剥がれた皮膚にそっと貼る。
そして、脱がしたバスローブをそっと肩口に掛けるように羽織らせた、その時。
部屋のベルが鳴った。
「ルームサービスが来たみたい」
「え?」
「俺が頼んどいた。殆ど食べれなかったでしょ。お腹空いてない?」
「……少し」
「部屋の中に運んで貰うから、一旦寝室に行ってて貰っていいかな」
「あ、はい」
バスローブ姿の彼女を見せたくない。
例えそれが、こういう状況を見慣れているホテルスタッフだとしても。
彼女が寝室へと入ったのを確認して、食事を中に運んで貰った。
懐石重のようなものと、フルーツの盛り合わせも一緒に。
「お待たせ。おいで」
リビングへと彼女を呼び、買って来たものを彼女に手渡す。
「俺もシャワー浴びて来るから、良かったらこれ使って」
「へ?」
「デザインは気に入らないかもしれないけど、無いよりはマシでしょ」
袋の中身を確認した彼女が、顔を赤くして小さく頷いた。