好き避け夫婦の秘めごと 7年越しの初夜

「ビール飲んでもいい?」
「はい。……では、私も」
「胡桃さんは無理しなくていいよ?あまりお酒好きじゃないでしょ」
「……」

知ってたの?
彼に合わせて飲んでいたことを。

「薬飲んでるんだし、飲酒はおすすめできないから」
「……二谷から、何を聞いたんですか?」
「何って、……大体?」

大体って?
薬を服用していることを知ってるみたいだから、二谷は彼に全部話してしまったのだろうか?

まぁ、それでも……。
早発閉経のことは二谷でも知らないから、全部というわけではないんだろうけど。

冷蔵庫から取り出したビールを開け、グビグビと喉を鳴らしながら飲む彼。
本当にお酒が好きなんだろうな。

「よしっ!……今夜はとことん話し合いしよう!」

半分ほど一気飲みした彼が、カンっと勢いよく缶ビールをテーブルの上に置いた。

「俺ら夫婦だよね?」
「……はい」
「この7年、俺に隠してることない?」
「へ?」
「俺はあるよ」
「ッ?!!」

分かってはいたけど、彼の口からあからさまに聞くと、やっぱり辛い。
心臓が下から突き上げられるような痛みを帯びる。

「今夜はさ、お互いに隠して来た秘密をカミングアウトしないか?」
「……」
「その上で、ちゃんと夫婦として新しい形を築きたいと思って」
「……」

それは『離婚』ということ?
彼の言葉の一つ一つが胸に突き刺さる。

「俺が胡桃さんにひた隠しにして来たことは2つある」
「……2つ、ですか」
「そっ、2つ。……胡桃さんは?」
「……私も大きく分けて2つ、……ですかね」
「じゃあ、俺から先にカミングアウトするから、胡桃さんも俺にその秘密を教えてくれる?」
「……」
「それと、約束して欲しい」
「……」
「その秘密が例えどんな事であっても、俺は無条件で受け入れるから、俺の秘密も受け入れて欲しい」
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