好き避け夫婦の秘めごと 7年越しの初夜

「じゃあ、次は胡桃さんの番。……俺に隠してる秘密って何?」
「……」
「時間はたくさんあるから、ゆっくりでいいよ」
「……私もビール飲んでいいですか?」
「フフッ、いいよ」

半分ほど残っている俺の飲みかけのビールを口にした彼女。
緊張を解すためなのか、喉を鳴らしながら平らげてしまった。

「はぁ…」
「足りないなら持って来るけど?」
「……大丈夫です」
「そう?」

バスローブ姿の彼女は、長い髪を左側に流した。
その仕草でさえ色気で悩殺されているというのに。
本当に無防備すぎる。

「私も……」
「……ん」
「………士門さんが大好きですっ」
「へ?」
「お見合い結婚でしたし、最初は『好き』という感情もよく分からなくて。凱亞として恋愛ものは多く手掛けてますけど、自分でコミックの原作を持っているわけではなくて、作画を担当してるだけなので、ストーリーは別の方が書かれたものに挿絵や表紙絵を描いてるだけなんです」
「……ん」
「だから、恋愛がどういうものかも分からずに結婚したのは事実です」
「……だよね」
「だけど、一緒に生活する中でどんどん惹かれて。篁の家では父の監視下での生活を強いられていたので、私と結婚して下さって、心から感謝しています」
「それって、……自由になれたからってこと?」
「……今でも父の監視はありますが、昔ほどではないです」
「そっか。……大変だったんだね」

再び瞳から涙が零れそうで、無意識にぎゅっと抱きしめていた。

「病院を受診した話は二谷から聞いてますよね?」
「……ん」
「父に命令されて、一通りの検査をしたんです」
「ん」
「そしたら、……早発閉経気味だと言われました」
「へ?……今何て?」
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